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定款変更を伴わない「本店移転日」とは、「取締役会決議により本店移転日として定められた日」であり、かつ「現実に本店を移転した日」を指します。定款変更を伴う・伴なわないとのように外苑を縮小しましたが「定款変更を伴う」場合がそれより特殊というわけではありません。問題は「現実に本店を移転した日」とはいつかです。そのために「本店」の定義と実体上の移転手続の流れを整理する必要があります。
1. 「本店」の定義と移転の実態
- 本店の定義:会社全体の営業に関する最高の指揮が発せられ、かつ全営業が統括されている営業の中心地をいいます(神崎満次郎・商業登記に強くなる本)。
- 現実の移転の判断:したがって、「現実に本店が移転した」と言うためには、上記の本店機能が新店舗へ移動していなければなりません。ただし、登記申請において本店機能の移転を証する書面の添付までは要求されていないため、登記官は知ることはできません。また、実際の引っ越しや機能移転は徐々に進むため、「現実の移転が完了した瞬間」は一定の幅(グラデーション)が生じます。おそらく現実移転時刻を算出するには、引越業者・工事業者を含めた全体会議が必要になると思います。
2. 決議と現実移転のパターン別整理
【第1パターン】現実の移転を行った後に、取締役会決議をする場合
- 流れ: 現実に移転完了(例:8月21日) ➔ 取締役会で承認決議(例:8月25日)
- 本店移転日: 取締役会決議の日(8月25日)
- 先例: 昭和35年12月6日民甲第3060号電報
- ※決議日をもって移転日とみなすため、移転日の確定に関するグラデーション問題は生じません。
【第2パターン】取締役会決議(例:8月25日移転と決定)をした後に、現実に移転する場合
- ⅰ. 引っ越し作業が予定より早く終わった場合(例:8月21日完了)
- 本店移転日: 決議で定めた日(8月25日)
- ⅱ. 予定通りに移転が完了した場合(8月25日引越完了)
- 本店移転日: 決議で定めた予定日(8月25日)
- ⅲ. 引っ越し作業が遅れてしまった(例:8月26日引越完了)
- 対応: 取締役会での再決議が必要(昭和41年2月7日回答)
【第3パターン】概括的な期間を定めて決議し、その期間内に現実に移転する場合
- 内容: 取締役会で「〇年8月10日〜8月30日までの間に移転する」と概括的に決議。
- 本店移転日: その期間内の「現実の移転日」(昭和41年2月7日回答)
【第4パターン】具体的な移転日の決定を代表取締役に委ねる場合
- 内容: 取締役会で移転の概括的決定を行い、具体的な移転日の決定を代表取締役に一任する。
- 本店移転日: 代表取締役が定めた現実の移転日(昭和41年2月7日回答)
- ※移転完了時期の曖昧さ(グラデーション問題)によるトラブルを避けるための手法です。
3. 実務上の所感
実務上は、手順が明快な【第2パターン】のⅰ・ⅱによる運用が最も理想的です。
【第2パターンⅲ】の再決議や、【第3パターン】【第4パターン】のような柔軟な決定方法は、厳密ではあるものの、実際の運用においてはやや神経質すぎる気がします。
美濃島