財産権論・所有権論・物権論の枠において、所有建物を修繕したり変更したり取り壊したりする処分権は所有者のみにあります。したがって、財産権論・所有権論・物権論の枠において、取り壊しに賃借人や抵当権者の同意を得る必要はありません。この裏返しとして、所有者ではない無権限者が器物を損壊すると刑法器物損壊罪になりますが、そうでない場合は債権法の709条の損害賠償は措くとして器物損壊罪にならないのです。
通常抵当権設定契約書には次のような条項がありますが、この承諾は物権論の枠外です。
第3条(抵当物件の処分・変更の禁止)
乙は、甲の書面による事前の承諾がなければ、本件不動産の現状を変更し、譲渡し、又は第三者のために権利を設定しない。
したがって、この意味において建物所有者は、抵当権者の承諾や同意を得ることなく建物を取り壊してよいのです。
昭56(0630)東京高裁は債権法709条の損害賠償がされました。
昭36年(1018)大阪高裁の第一審は訴えの利益のない空洞な裁判でした。建物所有者・褒徳信用組合は、区画整理事業上によって建物を取壊しても抵当権者からの損害賠償がされないと判断したのであれば、抵当権設定契約書第3条にかかわらず財産権論・所有権論・物権論における絶対的処分権者の立場で抵当権者の承諾を得ることなく取り壊せばよかったのです。
そうではなく、抵当権者からの損害賠償がされると判断したのであれば、区画整理事業組合に対して抵当権者の補償を求めることになります。