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昭56(0630)東京高裁

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コメントあり
【索引】抵当権付建物の滅失登記

損害賠償請求控訴事件

【事件番号】 東京高等裁判所判決/昭和56年(ネ)第316号
【判決日付】 昭和56年6月30日
【判示事項】 建物について設定された未確定根抵当権を過失によって消滅させた場合と損害賠償額算定の基準時
【判決要旨】 被担保債権の元本の未確定の根抵当権の設定登記のされた建物の譲受人が過失によって建物を取り壊し、根抵当権を消滅させた場合において、右建物の譲渡当時、根抵当権設定者が、建物の譲受人が建物を取り壊す目的で買い受けることを知っており、かつ根抵当権の被担保債権発生の原因となる継続的取引は客観的には継続せず、新たな元本債権は生じない状態にあり、しかし、右根抵当権の被担保債権である根抵当権設定者の根抵当権者に負っている債務の弁済期が到来していたものであるときは、建物の譲受人が根抵当権者に対して根抵当権侵害に基づいて負う損害賠償債務の金額の算定の基準時は、根抵当権消滅の時(根抵当権侵害の時)である。
【参照条文】 民法709
       民法398の2-1
【掲載誌】  金融・商事判例631号36頁
       金融法務事情984号60頁
【評釈論文】 金融法務事情1002号18頁

主   文

 本件控訴を棄却する。
 控訴費用は控訴人の負担とする。

       理   由

一 請求原因4の事実及び控訴会社において本件建物を取り毀したことは当事者間に争いがなく、《証拠》によると、請求原因1、2の事実及び控訴会社は、昭和五四年九月八日、訴外野地昭男から本件建物を買い受け、同月一三日その旨の所有権移転登記を経由したが、その数日後、控訴会社代表取締役小玉健五が現場で指揮をして、被控訴人に無断で本件建物を取り毀したものであることが認められ、右認定に反する証拠はない。したがつて、被控訴人は、本件建物の取毀しにより右根抵当権が消滅するに至つたため損害を蒙つたことが明らかである。
二 《証拠》によると、控訴会社は不動産業者であり、本件建物の敷地二六五平方メートルを含む島根正太郎所有の約六〇〇坪の土地を他に転売する目的で島根から買い受けたが、その地上には野地所有の本件建物が存在したので、同建物をも買い取つた上でこれを取り毀し、右土地全体を更地として売却するため、島根との土地買受の交渉と並行して野地との間で本件建物買受の交渉を行い、土地と建物の売買契約がほぼ同じころに成立したこと、控訴会社において、島根及び野地との契約締結の交渉に当たつたのは控訴会社で不動産売買の契約締結の職務を担当していた日戸規夫であるが、同人は、野地との交渉の過程において、野地は島根を含む複数の債権者に相当多額の債務を負担しており、そのうち島根に対する債務のみでも約一三、〇〇〇、〇〇〇円にのぼつていることを野地から聞かされており、野地に対して控訴会社が支払つた本件建物代金三、五〇〇、〇〇〇円も、日戸の立会いの下に、そのまま島根に対する債務の弁済として野地から島根に支払われたこと、日戸は、本件建物の買受に際し、被控訴人のための根抵当権が存することについては、野地から何ら説明を受けず、登記簿も閲覧せず、登記簿謄本を確認することもしなかつたため全く知らなかつたこと、日戸は、控訴会社に対する所有権移転登記手続のため、野地から本件建物についての野地名義の登記済証を預かり、これを司法書士に交付して右手続を委任したが、その際も、右登記済証の記載内容からは抵当権が存在することに気がつかなかつたこと、日戸は右登記手続の後、まだその旨の登記の記載のある登記簿謄本の交付も受けられない間に、直ちに、小玉健五に対し契約の締結ができ、移転登記手続をした旨の報告をし、その報告を受けた小玉は、その数日後に、自ら現場で指揮をして本件建物を取り毀したこと、控訴会社においては、小玉も、日戸も、右取毀しの後、一両日経つてようやく本件建物の登記簿謄本の交付を受け、初めて被控訴人のための根抵当権が存在することを知つたこと、控訴会社は、島根から買い受けた約六〇〇坪の土地を、昭和五四年一〇月ごろ他に転売したことを認めることができ、他に右認定に反する証拠はない。
 したがつて、本件建物の取毀し当時、日戸においても、小玉においても、被控訴人のための根抵当権が存在することは知らなかつたものと認められるが、本件のように他人が所有していた建物を買い受けて取り毀すに当たつては、それに先立つて、その建物について第三者の権利が存在しないかどうかを十分調査し、そのような権利が存在しないことを確認した上でこれを行うべきであり、特に本件建物のように登記がされている建物の場合には、その点を登記簿によつて確認することが当然必要であつて、建物の構造がどのようなものであつてもそれによつて異るところはないといわなければならない。そして、弁論の全趣旨によれば、控訴会社は、さして大規模の会社ではないことがうかがわれる上、不動産業者であつて不動産の権利関係の調査等については知識、経験を有し、ごく容易にこれを行い得たものであり、島根の所有土地に関する右取引は相当高額のものであつて、控訴会社代表者においても、日戸が本件建物について、野地との売買契約を締結し、司法書士に依頼して所有権移転登記手続をとつた直後、その旨の報告を受け、建物の取毀しも自ら現場で直接指揮して行つている状況にあるのであるから、小玉としては、取毀しを指示し、指揮するに当たつては、右のような点について、登記簿の調査を含む十分な調査、確認がなされていることを自ら確かめた上でその指示をするべきであつたのにこれを怠つたため、被控訴人のための根抵当権が存在することに気づかないまま、本件建物を取り毀し、右根抵当権を消滅させるに至つたものというべきである。してみると、控訴会社代表者小玉健五は、その職務を行うにつき過失により被控訴人の根抵当権を侵害したものというべく、控訴会社は、これにより被控訴人の蒙つた損害を賠償すべき義務がある。
三 そこで、損害額について検討する。
《証拠》によると、本件建物は昭和五五年度の固定資産家屋課税台帳になお登録されており、その評価額は一、六一九、六〇〇円となつているが、昭和五四年当時においても、その実際の価格は二、〇〇〇、〇〇〇円以上であること、本件建物の敷地に近い越谷市東越谷二-九-三の土地の昭和五四年度の公示価格は一平方メートル当たり七二、六〇〇円であるが実際の売買価格はこれを上回つていること、したがつて、前記敷地についての借地権付の本件建物の時価は、昭和五四年当時少なくとも一〇、〇〇〇、〇〇〇円を下らなかつたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。そして、前記認定のとおり、昭和五四年九月当時、野地は、多額の負債を負担していたばかりでなく、右認定の事実によれば、控訴会社においては本件建物を取毀しの目的で買い受けるものであることを知悉しながら、控訴会社の買受交渉に応じ、被控訴人のための前記根抵当権が存在することを告げずにこれを売り渡すという挙に出て担保の目的物を滅失させるに至らしめたものであるということができ、したがつて、本件建物の売却当時、右根抵当権の基本となる被控訴人と野地との間の継続的取引は客観的にはもはや継続すべき状態になく、新たに右根抵当権の担保すべき元本は生じない状況にあつたものというべきであり、しかも、被控訴人の野地に対する前記貸金債権の弁済期は既に到来していたのであるから、本件建物に対する根抵当権の消滅によつて被控訴人の蒙つた損害の算定については、根抵当権消滅当時被控訴人の有した右債権額を基準とすべきものであるが、当時における借地権付の本件建物の価格は右のとおり一〇、〇〇〇、〇〇〇円を下らなかつたと認められるから、被控訴人は少くとも右資金元本四、五〇〇、〇〇〇円相当の損害を蒙つたものというべきである。
四 よつて、控訴会社に対し、右損害の賠償として金四、五〇〇、〇〇〇円及びこれに対する右不法行為の後である昭和五五年三月一五日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める被控訴人の本訴請求は理由があり、これを認容した原判決は相当であるから、本件控訴は棄却する。(裁判長裁判官 園田 治 裁判官 菊池信男・柴田保幸)

昭36年(1018)大阪高裁LLI

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ここに整理事項として掲載しています。LLI(判例秘書)による判例です。

【判例番号】 L01620576
       抵当権設定登記等抹消請求控訴事件
【事件番号】 大阪高等裁判所判決/昭和34年(ネ)第1290号
【判決日付】 昭和36年10月18日
【判示事項】 建物滅失登記申請について登記簿上の所有権以外の権利者の承認の要旨
【判決要旨】 建物滅失登記申請について登記簿上の所有権以外の権利者の承認を必要としない
【参照条文】 不動産登記法93の6
       不動産登記法146
【掲載誌】  下級裁判所民事裁判例集

(争 点)
 控訴人(褒徳信用組合)の主張
  「本件建物は本訴提起後である昭和三四年二月一〇日神戸市復興土地区画整理事業の施行に伴う除却命令により取毀され滅失するに至つたので控訴人に対し本件建物の滅失登記申請につき不動産登記申請につき不動産登記法第一四六条第一項の同意を求めるものである。」
(判 決)
 控訴人は本件建物の所有者として、その滅失を原因とする建物滅失登記申請をなすにつき登記簿上の抵当権者たる被控訴人の同意を訴求しているのである(請求の趣旨には、建物滅失を原因とする抹消登記申請につき同意をせよと表示されているが、右は不動産登記法第九三条の六の建物滅失登記申請に対する同意を求める趣旨であると解すべきである)。
 

不動産登記法第九三条の六によれば建物の滅失があつたときは「表題部ニ記載シタル所 者又ハ所 権ノ登記名義人ハ一ケ月内二建物ノ滅失ノ登記ヲ申請スルコトヲ要ス」るのであるが、その登記の申請については、現行不動産登記法上、登記簿上の所有権以外の権利者の承諾書等を必要とすべき規定もなく、かかる権利者において右登記申請において右登記申請に同意すべき義務はないと解すべきである。(もつとも、昭和二六年法律第一五〇号による同法改正前は同法第九三条第八一条によりその建物の登記用紙に「所有権以外ノ権利二関スル登記アルトキハ申請書二基登記名義人ノ承諾書又ハ之二対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スルコトヲ要ス」ることとなつていたが、右改正により右各法条は削除された。)

 また、控訴人が挙示する同法第一四六条は、登記簿中事項欄の登記抹消につき「登記上利害ノ関係)有スル第三者」の承諾等を要するとしたもので、表示欄の抹消については、かかる第三者の承諾等は要しないものと解すべきである。したがつて、本件のごとき登記簿事項欄の抹消と登記用紙の閉鎖を招来する建物滅失登記の申請については、右法条を適用すべきものではない。

 そうすると、本件登記簿に表示された被控訴人名義の抵当権等が実体上有効に設定されたか否かにかかわらず、控訴人の体訴請求は主張自体理由ないことは明かである。
 控訴人は当審において訴を交換的に変更したもので鳴るから、新訴については第一審として判決すべく、控訴人の請求を棄却。

昭36年(1018)大阪高裁LG

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【索引】抵当権付建物の滅失登記

ここに整理事項として掲載しています。LGによる判例です。

(要旨)
■建物滅失を原因とする登記申請について、不動産登記法は登記簿上の所有権以外の権利者の承諾書等を必要とはしていないから、登記簿上の抵当権者において同意する義務はない。

■不動産登記法第146条は登記簿中事項欄の抹消について利害関係を有する第三者の承諾を規定したものであり、表示欄の抹消については第三者の承諾を要しないから、登記簿事項欄の抹消と登記用紙の閉鎖を招来する建物滅失登記申請については同条を適用すべきではない。


(全文)

主文
 控訴人の請求を棄却する。
 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実
 控訴代理人は「被控訴人は、控訴人に対し、控訴人が別紙目録記載の建物につき滅失を原因とする抹消登記申請をなすにつきこれが同意をせよ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は請求棄却の判決を求めた。

 当事者双方の事実上の陳述、および証拠の関係は、

 控訴代理人において「原判決事実摘示中原告の主張のような事実関係であつたところ、原判決別紙目録記載の建物(以下本件建物という)は本訴提起後である昭和34年2月10日神戸市復興土地区画整理事業の施行に伴う除却命令により取毀され滅失するに至つたので控訴人は訴を変更して被控訴人に対し本件建物の滅失登記申請につき不動産登記法第146条第1項の同意を求めるものである。」と述べ、立証として甲第5号証の1、2を提出し、証人横山司、同大浦努、同岩井初栄の各証言を援用し、

 被控訴代理人において、「本件建物が、控訴人主張のとおり滅失したことは争わない。しかし、建物滅失登記申請にあたり、利害関係人のなす同意は、利害関係人に同意義務の存する場合であり、本件において、被控訴人はその義務を負担しないから、控訴人の請求は失当である。」と述べ、立証として、証人岩井初栄の証言を援用し、「甲第5号証の1、2の成立はいずれも不知。」と述べたほかは原判決事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

理由

 控訴人は本件建物の所有者として、その滅失を原因とする建物滅失登記申請をなすにつき登記簿上の抵当権者たる被控訴人の同意を訴求しているのである。(請求の趣旨には、建物滅失を原因とする抹消登記申請につき同意をせよと表示されているが、右は不動産登記法第93条の6の建物滅失登記申請に対する同意を求める趣旨であると解すべきである。)

 不動産登記法第93条の6によれば建物の滅失があつたときは「表題部ニ記載シタル所有者又ハ所有権ノ登記名義人ハ一ケ月内ニ建物ノ滅失ノ登記ヲ申請スルコトヲ要ス」るのであるが、その登記申請については、現行不動産登記法上、登記簿上の所有権以外の権利者の承諾書等を必要とすべき規定もなく、かかる権利者において右登記申請に同意すべき義務はないと解すべきである。(もつとも、昭和26年法律第150号による同法改正前は同法第93条第81条によりその建物の登記用紙に「所有権以外ノ権利ニ関スル登記アルトキハ申請書ニ其登記名義人ノ承諾書又ハ之ニ対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スルコトヲ要ス」ることとなつていたが、右改正により右各法条は削除された。)

 また、控訴人が挙示する同法第146条は、登記簿中事項欄の登記抹消につき「登記上利害ノ関係ヲ有スル第三者」の承諾等を要するとしたもので、表示欄の抹消については、かかる第三者の承諾等は要しないものと解すべきである。したがつて、本件のごとき、登記簿事項欄の抹消と登記用紙の閉鎖を招来する建物滅失登記申請については、右法条を適用すべきものではない。

 そうすると、本件登記簿に表示された被控訴人名義の抵当権等が実体上有効に設定されたか否かにかかわらず、控訴人の本件請求は主張自体理由ないことは明かである。

 控訴人は当審において訴を交換的に変更したものであるから、新訴については第一審として判決すべく、控訴人の請求を棄却し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第89条第95条を適用して主文の通り判決する。

目録
 神戸市東灘区魚崎町魚崎字東下三反田166番の五地上
 家屋番号百67番
 一、 木造瓦葺2階建居宅 一棟
 建坪 23坪5合
 2階坪 14坪5合
 付属建物
 木造亜鉛鋼板葺平家建事務所
 建坪 2坪6合
 家屋番号169番
 一、 木造瓦葺2階建居宅 一棟
 建坪 16坪1合
 2階坪 5坪2合
 付属建物
 木造瓦葺平家建便所
 建坪 5合


昭25(0215)432

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昭和25年2月15日付民事甲第432号同局長宛民事局長回答g 

外国人が不動産に関する登記を申請する場合における印鑑証明書又はこれに代わるべき書面の提出方について

【465】 外国人が自己所有の不動産を売り渡し、その所有権移転の登記を申請するにあたり、印鑑証明書の代わりに市町村長が本人のサインに相違なき旨の証明をしたサイン入り証明書を提出したときは、これを印鑑証明として取り扱つて差支えないか。目下差しかかりたる事件がありますから電報回答願います。

回答

 貴見の通り取り扱つてさしつかえない右回答する。なお、外国人については、明治32年法律第50号(外国人ノ署名捺印及無資力証明ニ関スル法律)第1条の規定にかんがみ、不動産登記法施行細則第25条の規定の適用はないものと考えるので、照会のような証明書を提出しなかつた場合でも、その登記を受理すべきものであるから、念のため申し添える。

登研456(6664)

sites/21057070

 ○要旨 始期付(所有権登記名義人の死亡)所有権移転仮登記について仮登記名義人が先に死亡した場合に所有権登記名義人は、単独で仮登記名義人の法定相続人全員の承諾書を添付し、条件不成就を原因として仮登記の抹消登記を申請できる。

 ▽問 始期付所有権移転仮登記

 原因 昭和 年 月 日贈与(始期甲某死亡)

 右仮登記名義人乙某が先に死亡したため、その仮登記の相続による移転登記を省略し、直ちに右甲某が仮登記抹消の権利者とし、右亡乙某の法定相続人全員の承諾書(印鑑証明書添付)及び相続証明書を添付の上、原因を昭和 年 月 日(乙某死亡日)条件不成就として、法144条2項の規定に準じ、甲某が単独でその抹消登記の申請ができると思料しますが、いかがでしょうか。

 ◇答 御意見のとおりと考えます。

登研542(7356)

sites/21057069

○要旨 所有権移転請求権保全仮登記の名義人が死亡した後、法144条2項の規定により利害関係人が右仮登記の抹消を申請するには、その相続人全員が当該請求権を放棄した旨の承諾書を添付しても、右相続人のための相続の登記を省略することはできない。

▽問 売主を甲、買主を乙とする所有権移転請求権保全仮登記をなした後、乙が死亡した。この場合、法144条2項の利害関係人が、乙の相続人全員の承諾書を添付して、右仮登記の抹消を申請することができるものと考えますが、いかがでしょうか。

◇答 消極に解します。仮登記権利者について相続による仮登記の移転の登記を経由した上、抹消すべきものと考えます。

昭32(1227)2440

要旨:相続又は会社合併後の弁済にかかるものは、抵当権の承継の登記を経なければ抹消の登記申請をすることはできない。


全文:昭和32年10月29日付庶第3385号長崎地方法務局長照会・昭和32年12月27日付民事甲第2440号民事局長回答
抵当権登記の抹消について
【1598】 標記の件について、次のとおり疑義がありますので、至急何分の御教示をお願いいたします。  記
 相続又は会社合併による抵当権移転の登記未了の場合、相続又は会社合併を証する書面を添付したときは、相続又は会社合併後弁済にかかるもので、抵当権移転登記の申請をさせないで直ちに抵当権抹消の登記はできないでしようか。
回答
昭和32年10月29日付庶第3,385号をもつて問合せのあつた標記の件については、相続又は会社合併による抵当権の承継の登記をした上で、抵当権抹消の登記を申請すべきものと考える。


登記研究123号28頁(解説)抵当権の登記の抹消は、原則として、物件所有者(登記権利者)と抵当権者(登記義務者)の共同申請によることを必要とすることは、不動産登記法(以下「法」と略称する。)第二六条の明定するところである。

 従って、抵当権者の死亡による相続、合併(法人の場合)による承継、被担保債権の譲渡等の原因により抵当権が移転し、抵当権者に変更があったが、その移転の登記をしない前に、弁済その他の原因により抵当権の消滅の事由が生じた場合には、実体的には、当該承継後の抵当権者が抹消登記の登記義務者であることは自明の理であるが、抵当権の移転の登記をしないで、自己が当該抵当権の承継者(抹消登記の登記義務者)であることを証する書面を申請書に添付して、抹消登記の申請があった場合、受理登記してさしつかえないかどうかが、本件照会の趣旨と解される。

 第一の問題点は、法第二六条にいう「登記義務者」の意義であるが、ここにいう「登記義務者」とは、当該登記をすることによつて直接不利益を受ける登記上の当該権利の登記名義人を指称するもので、実体上の登記義務者を指称するものでないことは異論のないところであろう。

 第二の問題点は、所問のごとく、抹消登記の目的である抵当権についての相続又は一般承継を証する書面を申請書に添付した場合、当該抵当権の承継者が登記義務者となつて、抹消登記を申請することができるかどうかである。法第四十九条第六号の規定によれば、「第四十二条ニ掲ケタル書面ヲ提出シタル場合ヲ除ク外申請書ニ掲ケタル登記義務者ノ表示カ登記簿ト符合セサルトキ」には、当該申請を却下すべきものとしており、この場合の「第四十二条ニ掲ケタル書面ヲ提出シタル場合」というのは、いうまでもなく、被相続人において登記義務を負担し、その登記義務を相続人が承継した場合をいうのであつて、これを抵当権の抹消登記についていえば、被相続人の抵当権が弁済等によつて消滅し、その抹消登記の義務が生じたが、抹消登記をしないうちに相続が開始し、相続人が抹消登記義務を承継し、その承継人として登記を申請する場合である。しかして、この場合には、当該抵当権を相続人が承継しているのではないから、相続人名義に移転登記ができないので、当該抵当権の登記が相続人名義になつていなくても、相続人が登記義務者(正確には登記義務者の承継人)として申請してもさしつかえないのである。しかし、相続人が抵当権を取得した後当該抵当権が消滅した場合には、相続人が正に登記義務者になるのであり、この場合は、「申請書ニ掲ケタル登記義務者ノ表示カ登記簿ト符合」していることを要するのである。その趣旨は、当該申請に係る登記により登記上直接不利益を受ける者の申請によらなければ、登記をしないこととして、登記の真正を保証せんとするものである。

 権利の承継人がその登記をしないままで抹消の登記の申請を認めるとすると、登記官吏は、形式的審査において、当該抵当権が登記義務者に移転していることを認定することが適当でないのである(相続人からの申請であるとしても、真実に相続人に抵当権が移転したものであるかどうかは、当該抹消登記の申請書に添付される書面のみによつては確認することはできない)。

 従つて、抵当権の移転登記を省略しての登記申請は、申請書に掲げたる登記義務者の表示が登記簿と符合しない状態でなされることとなるので、正に法第四十九条第六号の規定に抵触することとなり、更に又、右の申請に基いて登記される登記上の形式は、登記上の権利名義人(抵当権者)が弁済を受け又は抵当権を放棄した形(原文ママ)当該登記がなされる結果、実体上の権利変動を如実に公示する登記制度の原則にも反する不都合が生じ、登記上の権利関係を混乱に導く虞れがあるである。

 かかる見地から、本件に関する民事局長の回答も、「相続又は会社合併による抵当権の承継の登記をした上で、抵当権抹消の登記を申請すべきもの」とされたものであろう。

 なお、抵当権の登記を抹消する場合に、登記義務者の住所が変更しているときは、その変更を証する書面を添付すれば、名義人の表示変更の登記を要せず、直ちに抹消登記を申請することができる旨の先例(昭和三一、九、二〇民事甲第二、二〇二号民事局長通達)があるが、この場合は、単に抵当権者の住所、氏名(名称)に変更が生じているのみであつて、抵当権者自体には何らの変更も生じていないのであるから、その変更を証する書面を添付せしめて抹消登記をしたとしても、前述のごとき矛盾は生じないので、事務簡素化の意味において、変更登記の省略が認められているものであろう。(内海)

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登記研究226号075頁

質疑応答【4326】相続登記について
1966年(昭和41年)9月20日発行(P75)

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令和2年から「この質疑応答(4329)の意味がワカラナイ」と悩んでいます。
後記の図・母乙が長男丙に対して扶養請求をしている・かかる扶養請求と夫又は父の相続は別ものだがバーターとなったのだろう、そういうことはよくあります。
問いかけ人の青森老司法書士は、質問が手馴れています。読者は、質疑応答の掛け合いに明示されていないΦを嗅ぎ取ります。
私はなるだけ通そうとするという反対側の考えの傾向が強く、登記書類は直接証明でなければならなず・間接証明はマズイ(却下とはいいません)という立場です。しかし、本件の扶養請求事件の調停証書に「相手方丙は、丁に相続分を譲渡した。」と書かれているのならば、これをもって相続分譲渡があったと評価するしかないと考えるのです。
しかし当局は、「御質問のような相続登記の申請はできないものと考えます」と、なにか根本的に違うと示唆しているように見えます。当居がなにを問題にしているかがわからないのです。
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○要旨 亡甲の共同相続人乙、丙、丁がある場合に、丙が乙に相続分を譲渡する旨の調停調書の正本と、乙・丁間の遺産分割協議書を添付して、乙及び丁より相続登記の申請をすることはできない。

▽問 被相続人甲の遺産につき、この相続登記前に、共同相続人である配偶者乙と共同相続人である長男丙間における扶養請求の家事調停で、丙が乙に対しその相続分を譲渡する旨の調停が成立したので、この調停調書の正本と、乙及び共同相続人である二男丁間の遺産分割協議書を添付して、右乙及び丁よりそれぞれ相続登記の申請ができると思いますが反対意見もありますのでご教示下さい。
なお、右について相続登記の申請ができるとすれば、相続物件中の農地は、農地法の許可を要するでしょうか。

◇答 御質問のような相続登記の申請はできないものと考えます。

H20(0818)2232

平20.8.18⺠⼆第2232号⺠事局⺠事第⼆課⻑依命通知

(kajyoの要旨)
登記嘱託書に添付する「登記原因証明情報」及び「登記承諾書」については、「登記原因証明情報兼登記承諾書」として取り扱うことができる。

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(コメント)
 kajyoは、上述のようにこの先例が「登記原因証明情報兼登記承諾書スタイル」を認めたように記述します。しかし、全文を読むとそのような文脈ではありません。この依命通知は「独立行政法人緑資源機構の解散に伴う不動産登記事務の取扱いについて」でありおそろしく長文ですので掲載を省略します。
 この照会者(独立行政法人森林総合研究所の理事長)は「登記原因証明情報兼登記承諾書」スタイルが当然よいことを前提にその他のことを訊いているのです。
 なんにしろ、世の中は「登記原因証明情報兼登記承諾書スタイル」はいいのか?という悩みがあったのでしょう。日司連で明確となっているのに…。
(閑話休題)
かかる「登記原因証明情報兼登記承諾書」スタイルは、愛知でとあることからとある方法でしたものです。当時、最後の最後で「登記原因証明情報および登記承諾書」「登記原因証明情報及び登記承諾書」「登記原因証明情報及登記承諾書」を含む四つのうちどれを出そうかと選択した経緯があります。

最初に「登記原因証明情報兼登記承諾書」スタイルを認めた公式文書は、日司連のQ&Aだったと記憶する。そこには『この二つの書面は、本来別々の性質だから一枚にするべきでないが便宜認める』というように眉間にしわを寄せたようなコメントがあった。

まさしく、本来別々の性質だから一枚にするべきでないと考える。こういうことが横行すると「相続分譲渡証明書および甲遺産分割協議書および乙遺産分割協議書および他に子なき旨の上申書」というマゼコゼ書面の受け入れざるを得なくなってしまうではないか。「登記原因証明情報および登記委任状」もよくなってしまう…とくに登記承諾書を含めてこの三つはのみ書面なのです。

なんにしろ、意図してしたことでしたが、これほどまで嘱託登記実務に浸透してしまった本件は、もう戻れなくなってしまいました・・・反省しています。この点は、嘱託登記だからいいじゃないか理論で他とは区別しよう。

kasasagi

既に二次が一切で確定の場合、二次の次男は一次相続遺産分割協議の当事者か? で引用しています。

登記申請の包括委任状についてー不動産登記に関する最近の主要通達の研究

登記先例解説集257号(1983号)
藤谷定勝(法務省民事局第三課係長)
sites/21036809

研究
1 本件照会の趣旨と問題点
(1)照会の趣旨
(2)実体的に包括委任することは可能か
(3)代理権限証書としての適格性の要件とは
  イ形式的要件/ロ実質的要件/ハその他の記載事項/ニ実態に適合した包括委任状が代理権限証書として適格性を欠く理由
(4)金融機関の場合に多い包括委任が認められた先例
(5)個人について認められた昭和27年の先例

2 本件についての検討
(1)本件と類似した例としての登記課長会同での議論
(2)本件通達の出された経緯と白紙委任状等の乱用
(3)実体法上有効とされても登記手続上できることが前提
(4)代理権限証書としては委任事項が具体的に記載されていることが必要
(5)登記官が法律等による代理権限について判断できることの前提
(6)代理権限の有無について登記官が形式的審査で判断できることが認定の基準か


(中略)

司会

この照会の要旨としては、住宅金融公庫から金銭消費貸借契約の締結とか担保権設定契約の締結、担保権の設定、移転、変更、処分、更正、回復または抹消の登記の申請等の包括委任を受けている金融機関が、その包括委任に基づいてさらに特定の個人を登記の申請等の復代理人として選任した場合に、その代理権限証書がたまたまこの照会の場合のように包括委任状であったときにはたして登記の申請書に添付する委任状として適格性があるかどうか、ということですね。

(中略)

藤谷

委任の範囲というのは具体的な委任行為によって決まってくるわけですが、委任によって与えられる代理権というのは、個々の特定事項に限って、あるいは一定の範囲の事項について包括的に与えるということができるようになっています。したがって、実体法上は包括的な委任も可能である、というふうに解されています。

(中略)

司会

そうしますと、実際に登記の分野では、ただいま説明いただいたように、ある面においては具体的な登記事項が記載されているような委任状でなければダメだということになるわけですが、先ほど説明いただいたように実体法上は包括的な委任は可能だということになっている。しかし、包括的な委任は可能だと言いながら、登記の申請書に添付する委任状としては、形式的な要件と実質的な要件が備わっていなければ実際は適格性がないのではないかといわれることになるわけです。実体的に包括委任が可能だとした場合には、そういうことを記載した委任状は、代理権限証書として適格性を欠くというのは、理論的にはおかしいような気もするのですが。

(中略)

藤谷

そのあたりは確かにいわれるとおり理論的に不審を持たれる方も多いと思います。実体法上そういった包括委任が可能である、有効だということですが、そのことを端的にあらわした委任状が登記申請に関しては適格性を欠くという根拠は理論的には説明しにくい面があろうかと思いますが、やはり手続法たる登記制度の要請から来ているのではないかと思います。

つまり、登記官は形式的な方法で書類の審査をするということですから、委任状に記載されている事項に基づいてはたして受任者に代理権があるのかどうか、あるいは委任されたとおりの登記の申請がされているのかどうかを形式的に判断するということになるので、委任状にその具体的な委任事項というのが記載されていない、包括的な形でしか記載されていないということになれば、それがまさに正しい委任された事項に基づいた登記の申請であるかどうかということを判断するのが形式的に容易でなくなってしまう、そしてまた、判断を誤るということにもなるのではないかというような感じがするわけです。したがいまして、登記申請書に添付する代理権限証書としては、具体的な委任事項が明確に記載されていることが望ましく、登記事務を適正、迅速に処理するために登記法はそのような具体的な書面を提出することを要求しているのではないかと思うのです。

以上

事業用借地権の変遷