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登研456(6664)

sites/21057070

 ○要旨 始期付(所有権登記名義人の死亡)所有権移転仮登記について仮登記名義人が先に死亡した場合に所有権登記名義人は、単独で仮登記名義人の法定相続人全員の承諾書を添付し、条件不成就を原因として仮登記の抹消登記を申請できる。

 ▽問 始期付所有権移転仮登記

 原因 昭和 年 月 日贈与(始期甲某死亡)

 右仮登記名義人乙某が先に死亡したため、その仮登記の相続による移転登記を省略し、直ちに右甲某が仮登記抹消の権利者とし、右亡乙某の法定相続人全員の承諾書(印鑑証明書添付)及び相続証明書を添付の上、原因を昭和 年 月 日(乙某死亡日)条件不成就として、法144条2項の規定に準じ、甲某が単独でその抹消登記の申請ができると思料しますが、いかがでしょうか。

 ◇答 御意見のとおりと考えます。

登研542(7356)

sites/21057069

○要旨 所有権移転請求権保全仮登記の名義人が死亡した後、法144条2項の規定により利害関係人が右仮登記の抹消を申請するには、その相続人全員が当該請求権を放棄した旨の承諾書を添付しても、右相続人のための相続の登記を省略することはできない。

▽問 売主を甲、買主を乙とする所有権移転請求権保全仮登記をなした後、乙が死亡した。この場合、法144条2項の利害関係人が、乙の相続人全員の承諾書を添付して、右仮登記の抹消を申請することができるものと考えますが、いかがでしょうか。

◇答 消極に解します。仮登記権利者について相続による仮登記の移転の登記を経由した上、抹消すべきものと考えます。

昭32(1227)2440

要旨:相続又は会社合併後の弁済にかかるものは、抵当権の承継の登記を経なければ抹消の登記申請をすることはできない。


全文:昭和32年10月29日付庶第3385号長崎地方法務局長照会・昭和32年12月27日付民事甲第2440号民事局長回答
抵当権登記の抹消について
【1598】 標記の件について、次のとおり疑義がありますので、至急何分の御教示をお願いいたします。  記
 相続又は会社合併による抵当権移転の登記未了の場合、相続又は会社合併を証する書面を添付したときは、相続又は会社合併後弁済にかかるもので、抵当権移転登記の申請をさせないで直ちに抵当権抹消の登記はできないでしようか。
回答
昭和32年10月29日付庶第3,385号をもつて問合せのあつた標記の件については、相続又は会社合併による抵当権の承継の登記をした上で、抵当権抹消の登記を申請すべきものと考える。


登記研究123号28頁(解説)抵当権の登記の抹消は、原則として、物件所有者(登記権利者)と抵当権者(登記義務者)の共同申請によることを必要とすることは、不動産登記法(以下「法」と略称する。)第二六条の明定するところである。

 従って、抵当権者の死亡による相続、合併(法人の場合)による承継、被担保債権の譲渡等の原因により抵当権が移転し、抵当権者に変更があったが、その移転の登記をしない前に、弁済その他の原因により抵当権の消滅の事由が生じた場合には、実体的には、当該承継後の抵当権者が抹消登記の登記義務者であることは自明の理であるが、抵当権の移転の登記をしないで、自己が当該抵当権の承継者(抹消登記の登記義務者)であることを証する書面を申請書に添付して、抹消登記の申請があった場合、受理登記してさしつかえないかどうかが、本件照会の趣旨と解される。

 第一の問題点は、法第二六条にいう「登記義務者」の意義であるが、ここにいう「登記義務者」とは、当該登記をすることによつて直接不利益を受ける登記上の当該権利の登記名義人を指称するもので、実体上の登記義務者を指称するものでないことは異論のないところであろう。

 第二の問題点は、所問のごとく、抹消登記の目的である抵当権についての相続又は一般承継を証する書面を申請書に添付した場合、当該抵当権の承継者が登記義務者となつて、抹消登記を申請することができるかどうかである。法第四十九条第六号の規定によれば、「第四十二条ニ掲ケタル書面ヲ提出シタル場合ヲ除ク外申請書ニ掲ケタル登記義務者ノ表示カ登記簿ト符合セサルトキ」には、当該申請を却下すべきものとしており、この場合の「第四十二条ニ掲ケタル書面ヲ提出シタル場合」というのは、いうまでもなく、被相続人において登記義務を負担し、その登記義務を相続人が承継した場合をいうのであつて、これを抵当権の抹消登記についていえば、被相続人の抵当権が弁済等によつて消滅し、その抹消登記の義務が生じたが、抹消登記をしないうちに相続が開始し、相続人が抹消登記義務を承継し、その承継人として登記を申請する場合である。しかして、この場合には、当該抵当権を相続人が承継しているのではないから、相続人名義に移転登記ができないので、当該抵当権の登記が相続人名義になつていなくても、相続人が登記義務者(正確には登記義務者の承継人)として申請してもさしつかえないのである。しかし、相続人が抵当権を取得した後当該抵当権が消滅した場合には、相続人が正に登記義務者になるのであり、この場合は、「申請書ニ掲ケタル登記義務者ノ表示カ登記簿ト符合」していることを要するのである。その趣旨は、当該申請に係る登記により登記上直接不利益を受ける者の申請によらなければ、登記をしないこととして、登記の真正を保証せんとするものである。

 権利の承継人がその登記をしないままで抹消の登記の申請を認めるとすると、登記官吏は、形式的審査において、当該抵当権が登記義務者に移転していることを認定することが適当でないのである(相続人からの申請であるとしても、真実に相続人に抵当権が移転したものであるかどうかは、当該抹消登記の申請書に添付される書面のみによつては確認することはできない)。

 従つて、抵当権の移転登記を省略しての登記申請は、申請書に掲げたる登記義務者の表示が登記簿と符合しない状態でなされることとなるので、正に法第四十九条第六号の規定に抵触することとなり、更に又、右の申請に基いて登記される登記上の形式は、登記上の権利名義人(抵当権者)が弁済を受け又は抵当権を放棄した形(原文ママ)当該登記がなされる結果、実体上の権利変動を如実に公示する登記制度の原則にも反する不都合が生じ、登記上の権利関係を混乱に導く虞れがあるである。

 かかる見地から、本件に関する民事局長の回答も、「相続又は会社合併による抵当権の承継の登記をした上で、抵当権抹消の登記を申請すべきもの」とされたものであろう。

 なお、抵当権の登記を抹消する場合に、登記義務者の住所が変更しているときは、その変更を証する書面を添付すれば、名義人の表示変更の登記を要せず、直ちに抹消登記を申請することができる旨の先例(昭和三一、九、二〇民事甲第二、二〇二号民事局長通達)があるが、この場合は、単に抵当権者の住所、氏名(名称)に変更が生じているのみであつて、抵当権者自体には何らの変更も生じていないのであるから、その変更を証する書面を添付せしめて抹消登記をしたとしても、前述のごとき矛盾は生じないので、事務簡素化の意味において、変更登記の省略が認められているものであろう。(内海)

sites/21057075

登記研究226号075頁

質疑応答【4326】相続登記について
1966年(昭和41年)9月20日発行(P75)

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令和2年から「この質疑応答(4329)の意味がワカラナイ」と悩んでいます。
後記の図・母乙が長男丙に対して扶養請求をしている・かかる扶養請求と夫又は父の相続は別ものだがバーターとなったのだろう、そういうことはよくあります。
問いかけ人の青森老司法書士は、質問が手馴れています。読者は、質疑応答の掛け合いに明示されていないΦを嗅ぎ取ります。
私はなるだけ通そうとするという反対側の考えの傾向が強く、登記書類は直接証明でなければならなず・間接証明はマズイ(却下とはいいません)という立場です。しかし、本件の扶養請求事件の調停証書に「相手方丙は、丁に相続分を譲渡した。」と書かれているのならば、これをもって相続分譲渡があったと評価するしかないと考えるのです。
しかし当局は、「御質問のような相続登記の申請はできないものと考えます」と、なにか根本的に違うと示唆しているように見えます。当居がなにを問題にしているかがわからないのです。
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○要旨 亡甲の共同相続人乙、丙、丁がある場合に、丙が乙に相続分を譲渡する旨の調停調書の正本と、乙・丁間の遺産分割協議書を添付して、乙及び丁より相続登記の申請をすることはできない。

▽問 被相続人甲の遺産につき、この相続登記前に、共同相続人である配偶者乙と共同相続人である長男丙間における扶養請求の家事調停で、丙が乙に対しその相続分を譲渡する旨の調停が成立したので、この調停調書の正本と、乙及び共同相続人である二男丁間の遺産分割協議書を添付して、右乙及び丁よりそれぞれ相続登記の申請ができると思いますが反対意見もありますのでご教示下さい。
なお、右について相続登記の申請ができるとすれば、相続物件中の農地は、農地法の許可を要するでしょうか。

◇答 御質問のような相続登記の申請はできないものと考えます。

H20(0818)2232

平20.8.18⺠⼆第2232号⺠事局⺠事第⼆課⻑依命通知

(kajyoの要旨)
登記嘱託書に添付する「登記原因証明情報」及び「登記承諾書」については、「登記原因証明情報兼登記承諾書」として取り扱うことができる。

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(コメント)
 kajyoは、上述のようにこの先例が「登記原因証明情報兼登記承諾書スタイル」を認めたように記述します。しかし、全文を読むとそのような文脈ではありません。この依命通知は「独立行政法人緑資源機構の解散に伴う不動産登記事務の取扱いについて」でありおそろしく長文ですので掲載を省略します。
 この照会者(独立行政法人森林総合研究所の理事長)は「登記原因証明情報兼登記承諾書」スタイルが当然よいことを前提にその他のことを訊いているのです。
 なんにしろ、世の中は「登記原因証明情報兼登記承諾書スタイル」はいいのか?という悩みがあったのでしょう。日司連で明確となっているのに…。
(閑話休題)
かかる「登記原因証明情報兼登記承諾書」スタイルは、愛知でとあることからとある方法でしたものです。当時、最後の最後で「登記原因証明情報および登記承諾書」「登記原因証明情報及び登記承諾書」「登記原因証明情報及登記承諾書」を含む四つのうちどれを出そうかと選択した経緯があります。

最初に「登記原因証明情報兼登記承諾書」スタイルを認めた公式文書は、日司連のQ&Aだったと記憶する。そこには『この二つの書面は、本来別々の性質だから一枚にするべきでないが便宜認める』というように眉間にしわを寄せたようなコメントがあった。

まさしく、本来別々の性質だから一枚にするべきでないと考える。こういうことが横行すると「相続分譲渡証明書および甲遺産分割協議書および乙遺産分割協議書および他に子なき旨の上申書」というマゼコゼ書面の受け入れざるを得なくなってしまうではないか。「登記原因証明情報および登記委任状」もよくなってしまう…とくに登記承諾書を含めてこの三つはのみ書面なのです。

なんにしろ、意図してしたことでしたが、これほどまで嘱託登記実務に浸透してしまった本件は、もう戻れなくなってしまいました・・・反省しています。この点は、嘱託登記だからいいじゃないか理論で他とは区別しよう。

kasasagi

既に二次が一切で確定の場合、二次の次男は一次相続遺産分割協議の当事者か? で引用しています。

登記申請の包括委任状についてー不動産登記に関する最近の主要通達の研究

登記先例解説集257号(1983号)
藤谷定勝(法務省民事局第三課係長)
sites/21036809

研究
1 本件照会の趣旨と問題点
(1)照会の趣旨
(2)実体的に包括委任することは可能か
(3)代理権限証書としての適格性の要件とは
  イ形式的要件/ロ実質的要件/ハその他の記載事項/ニ実態に適合した包括委任状が代理権限証書として適格性を欠く理由
(4)金融機関の場合に多い包括委任が認められた先例
(5)個人について認められた昭和27年の先例

2 本件についての検討
(1)本件と類似した例としての登記課長会同での議論
(2)本件通達の出された経緯と白紙委任状等の乱用
(3)実体法上有効とされても登記手続上できることが前提
(4)代理権限証書としては委任事項が具体的に記載されていることが必要
(5)登記官が法律等による代理権限について判断できることの前提
(6)代理権限の有無について登記官が形式的審査で判断できることが認定の基準か


(中略)

司会

この照会の要旨としては、住宅金融公庫から金銭消費貸借契約の締結とか担保権設定契約の締結、担保権の設定、移転、変更、処分、更正、回復または抹消の登記の申請等の包括委任を受けている金融機関が、その包括委任に基づいてさらに特定の個人を登記の申請等の復代理人として選任した場合に、その代理権限証書がたまたまこの照会の場合のように包括委任状であったときにはたして登記の申請書に添付する委任状として適格性があるかどうか、ということですね。

(中略)

藤谷

委任の範囲というのは具体的な委任行為によって決まってくるわけですが、委任によって与えられる代理権というのは、個々の特定事項に限って、あるいは一定の範囲の事項について包括的に与えるということができるようになっています。したがって、実体法上は包括的な委任も可能である、というふうに解されています。

(中略)

司会

そうしますと、実際に登記の分野では、ただいま説明いただいたように、ある面においては具体的な登記事項が記載されているような委任状でなければダメだということになるわけですが、先ほど説明いただいたように実体法上は包括的な委任は可能だということになっている。しかし、包括的な委任は可能だと言いながら、登記の申請書に添付する委任状としては、形式的な要件と実質的な要件が備わっていなければ実際は適格性がないのではないかといわれることになるわけです。実体的に包括委任が可能だとした場合には、そういうことを記載した委任状は、代理権限証書として適格性を欠くというのは、理論的にはおかしいような気もするのですが。

(中略)

藤谷

そのあたりは確かにいわれるとおり理論的に不審を持たれる方も多いと思います。実体法上そういった包括委任が可能である、有効だということですが、そのことを端的にあらわした委任状が登記申請に関しては適格性を欠くという根拠は理論的には説明しにくい面があろうかと思いますが、やはり手続法たる登記制度の要請から来ているのではないかと思います。

つまり、登記官は形式的な方法で書類の審査をするということですから、委任状に記載されている事項に基づいてはたして受任者に代理権があるのかどうか、あるいは委任されたとおりの登記の申請がされているのかどうかを形式的に判断するということになるので、委任状にその具体的な委任事項というのが記載されていない、包括的な形でしか記載されていないということになれば、それがまさに正しい委任された事項に基づいた登記の申請であるかどうかということを判断するのが形式的に容易でなくなってしまう、そしてまた、判断を誤るということにもなるのではないかというような感じがするわけです。したがいまして、登記申請書に添付する代理権限証書としては、具体的な委任事項が明確に記載されていることが望ましく、登記事務を適正、迅速に処理するために登記法はそのような具体的な書面を提出することを要求しているのではないかと思うのです。

以上

事業用借地権の変遷

R02(0327)308

令和2年3月27日付け法務省民二第308号法務局長
電力システム改革に伴う分社化に係る登記申請業務の下部委譲について

(通知)標記の件について,別紙甲号のとおり中部電力株式会社代表取締役から民事局長宛てに照会があり,別紙乙号のとおり回答しましたので,この旨を貴管下登記官に周知方お取り計らい願います。

(別紙甲号)謹啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

さて,弊社におきましては,登記申請業務の下部委譲に伴う委任事項につきまして,平成27年(2015年)12月1日付け法務省民二第774号にてご教示を賜っております。

おかげをもちまして,電力供給設備等の用に供するための用地買収,送電線下における地役権設定等に関する登記申請について弊社代表取締役から出先機関の長に委任事項を包括的なものにした委任状を交付し,これを使用した登記の申請を行うことにより,登記申請業務の合理化,迅速化が大いにはかられております。

2020年4月,弊社は電力システム改革に伴い「中部電力株式会社」と「中部電力パワーグリッド株式会社」に分社し,上記登記申請業務を中部電力パワーグリッド株式会社に承継いたします。

つきましては,中部電力パワーグリッド株式会社においても従来と同様に,別紙様式の委任状を使用して登記申請を行うことといたしたいと考えますので,ご多用中恐縮ではありますが,なにぶんのご教示を賜りたく,ご照会もうしあげます。

なお,差し支えない場合は,名古屋法務局および同局管内地方法務局ならびに静岡地方法務局および長野地方法務局の登記官に周知をいただきますようお願い申し上げます。敬具

(別紙乙号)本年3月16日付けをもって照会のありました標記の件については,貴見のとおり取り扱われて差し支えありません。

なお,この旨を名古屋法務局,同局管内地方法務局,静岡地方法務局及び長野地方法務局に通知しましたので,申し添えます。

(添付資料・ 包括委任状(案))

sites/s1979_23

登記研究721質疑応答7865

借地借家法の一部を改正する法律の施行前に存続期間を20年として締結した事業用借地権設定契約について、同法施行後に存続期間を30年に変更する契約をした場合の登記の可否

○要旨 借地借家法の一部を改正する法律の施行前に存続期間を20年として締結した事業用借地権設定契約については、契約の効力が同法施行後に発生する場合に限り、同法施行後に存続期間を30年に変更する契約をし、登記の申請をすることができる。

▽問 借地借家法の一部を改正する法律(平成19年法律第132号。以下「法」という。)附則第2条において「この法律の施行前に設定された借地権(転借地権を含む。)については、なお、従前の例による。」とされていますが、法施行後に契約の効力が生ずる場合には、法施行前に設定された借地権に当たらないと考えられるところ、法施行前に存続期間を20年として締結した事業用借地権設定契約につき、法施行後に存続期間を30年と変更することについては、法施行後に契約の効力が生ずるものとして契約及び登記ともに可能と考えますが、いかがでしょうか。

◇答 御意見のとおりと考えます。


この質疑応答の721号にH19(1218)2828通達が掲載されています。

index
1 事業用借地権の変遷
2. H04(0707)3930通達
3. H19(1218)2828通達
4. 登記研究721質疑応答7865



sites/21052298

H04(0707)3930通達

平成4年7月7日付け法務省民三第3930号法務局長、地方法務局長あて民事局長通達

借地借家法の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(通達)

【4718】 借地借家法(平成3年法律第90号。以下「新法」という。)が本年8月1日から施行されることとなり、建物保護に関する法律(明治42年法律第40号)、借地法(大正10年法律第49号)及び借家法(大正10年法律第50号)が廃止される(新法附則第2条)とともに、不動産登記法が改正される(新法附則第15条。以下改正後の不動産登記法を「不登法」という。)こととなつたので、これに伴う不動産登記事務の取扱いについては下記の点に留意するよう貴管下登記官に周知方取り計らい願います。

第1 借地権の存続期間等
第2 自己借地権
第3 定期借地権等
第4 期限付建物賃借
第5 登記の記載


このサイトは、上記の「第3 定期借地権等」の部分です。
第3 定期借地権等の目次は、次です。

1 定期借地権
2 事業用借地権
3 一時使用目的の借地権


1 定期借地権

(1) 借地権の存続期間が50年以上である場合には、契約の更新がないこと、建物の築造による存続期間の延長がないこと、及び新法第13条の規定による建物等の買取りの請求をしないことを内容とする特約(以下「新法第22条の特約」という。)をすることができることとされた(新法第22条)。

 この特約のある借地権(以下「定期借地権」という。)の設定の登記の特約の記載は、「借地借家法第22条の特約」とする(不登法第111条第1項、第132条第1項)。

 なお、借地権の設定の登記に新法第22条の特約を追加する変更の登記の申請は、受理することができない。

(2) 定期借地権の設定の登記の申請書には、新法第22条後段に規定する公正証書(謄本)等の書面を添付することを要する。ただし、登記原因を証する書面が執行力ある判決であるときは、この限りでない(不登法第111条第3項、第132条第2項)。

 2 事業用借地権

(1) 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上20年以下とする借地権(以下「事業用借地権」という。)を設定した場合には、新法の存続期間等に関する規定の適用はないこととされた(新法第24条)。

 この借地権の設定の登記の設定の目的の記載は、「借地借家法第24条の建物所有」とする(不登法第111条第1項、第132条第1項)。

(2) 事業用借地権の設定の登記の申請書には、新法第24条第2項に規定する公正証書の謄本を添付することを要する。ただし、登記原因を証する書面が執行力ある判決であるときは、この限りでない(不登法第111条第3項、第132条第2項)。

(3) 事業用借地権の存続期間の変更を原因とする登記の申請については、その借地権が設定された時から変更後の存続期間が満了すべき時までの期間が10年以上20年以下の範囲内にあるときに限り、受理することができる

 なお、この場合における登記の申請書には、公正証書の謄本を添付することを要しない。

 3 一時使用目的の借地権

 臨時設備の設置その他一時使用のために設定したことが明らかな借地権については、新法の存続期間等に関する規定の適用はない(新法第25条)。

 この借地権の設定の登記の設定の目的の記載は、「臨時建物所有」とする。


index
1 事業用借地権の変遷
2. H04(0707)3930通達
3. H19(1218)2828通達
4. 登記研究721質疑応答7865

sites/21055347

H19(1218)2828通達

1 改正法による改正後の借地借家法23条1項の事業用定期借地権の登記
2 新法23条2項の事業用定期借地権の登記
3 整備政令による改正後の整理登記令15条の登記
4 登記の記録
5 経過措置
別紙 登記記録の振り合い 略


◎平成19年12月28日付け法務省民二第2828号法務局長、地方法務局長あて法務省民事局長通達

借地借家法の一部を改正する法律及び借地借家法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(通達)

【5349】 借地借家法の一部を改正する法律(平成19年法律第132号。以下「改正法」という。)により不動産登記法(平成16年法律第123号。以下「不登法」という。)の一部が改正され、また、借地借家法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(平成19年政令第390号。以下「整備政令」という。)により不動産登記令(平成16年政令第379号。以下「不登令」という。)及び土地区画整理登記令(昭和30年政令第221号。以下「整理登記令」という。)の一部が改正され、それぞれ平成20年1月1日から施行されますので、これに伴う不動産登記事務の取扱いについては、下記の点に留意するよう、貴管下登記官に周知方取り計らい願います。

1 改正法による改正後の借地借家法(平成3年法律第90号。以下「新法」という。)第23条第1項の事業用定期借地権の登記

(1)専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的とし、存続期間を30年以上50年未満とする場合には、契約の更新がないこと、建物の築造による存続期間の延長がないこと及び建物等の買取りの請求をしないことを内容とする特約をすることができることとされた(新法第23条第1項)。

 この新法第23条第1項の事業用定期借地権の設定の登記については、借地権設定の目的が同項の建物所有である旨及びこの特約の定めが登記事項とされたことから(不登法第78条第3号及び第4号、第81条第7号及び第8号)、借地権の設定の登記の設定の目的の記録は「借地借家法第23条第1項の建物所有」とし、特約は「借地借家法第23条第1項の特約」とする。

(2)新法第23条第1項の事業用定期借地権の設定の登記の申請をする場合には、その申請情報と併せて同条第3項の公正証書の謄本を提供することを要する。ただし、登記原因を証する情報として執行力のある確定判決の判決書の正本が提供されたときは、この限りでない(不登令別表の33の項添付情報欄ロ、不登令別表の38の項添付情報欄ロ)。

(3)新法第23条第1項の事業用定期借地権の存続期間の変更を原因とする登記の申請については、設定から変更後の存続期間満了までが30年以上50年未満の範囲内にあるときに限り、受理することができる。なお、この場合は、登記の申請情報と併せて公正証書の謄本を提供することは要しない。

2 新法第23条第2項の事業用定期借地権の登記

 新法第23条第2項の事業用定期借地権は、その存続期間が10年以上30年未満に延長されたほかは、改正法による改正前の借地借家法第24条第1項の事業用借地権と基本的に同様であり、その取扱いは、従前と同様である。なお、改正により根拠法条が移動したことに伴い、借地権の設定の登記の設定の目的の記録は、「借地借家法第23条第2項の建物所有」とする。

3 整備政令による改正後の整理登記令第15条の登記

 土地区画整理法(昭和29年法律第119号)第104条第7項及び被災市街地復興特別措置法(平成7年法律第14号)第15条第5項の場合における土地区画整理法第107条第2項の規定による登記の申請又は嘱託をする場合には、その申請情報又は嘱託情報の内容については、不登令第3条各号に掲げる事項のほか整理登記令第16条に規定するところによるところ、借地権の登記の登記事項の変更に合わせて整備政令により見直しがされた。

4 登記の記録

 1及び2の登記の記録は、別紙の振り合いによる。

5 経過措置

 改正法の施行前に設定された借地権については、なお従前の例によるとされたため(改正法附則第2条)、改正法施行前に設定された事業用借地権についての取扱いは、従前と同様である。

【図】

【図】


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1 事業用借地権の変遷
2. H04(0707)3930通達
3. H19(1218)2828通達
4. 登記研究721質疑応答7865

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