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規則93条の実地調査における調査報告書の記載例は、日調連が当局と調整のうえ作成したものと思います。その記載例を紹介します。
調査項目:滅失物件の抵当権者への確認(取壊の事実確認)
調査結果及び報告事項:
①当職は、〇〇銀行 × × 支店(12-3455-0123)の担当者□□氏に対し、本物件を取り壊して建替えを行うことを承認していることの確認を取っている。
②利害関係人である抵当権者が、その目的たる建物が滅失している事実の確認をしたこと、及び当該抵当権が事実上消滅したことを承認していることを確認。
一
K先生は、このサイトで『滅失登記ができるかどうかのポイントは、弁済が終わっていること…』『そのことを、調査報告書に書いて登記申請するので。特段の問題なし・年月日弁済済みとか、〇〇銀行○支店担当〇〇に抵当権付きのまま滅失登記をする旨の同意を得たなどと記載する』 と書いています。
控訴人(褒徳信用組合)代理人弁護士(おそらく担当司法書士)も建物の滅失登記に抵当権者の承諾が必要と考えていました。36年(1018)大阪高裁を見よ。なお(おそらく)大阪法務局の内部通達にはそのようにされていたと想像します。
調査士が抵当権者に対してするこの調査報告書の中心は、『貴方の抵当権が設定されている建物はこれ(指差し)であるか』です。調査士は建物取壊しのあとに登場するので、取壊して建て替えを承認するか否かと訊く場面にありません。被担保債権があるかないかは無関係です。建物の滅失登記に抵当権者の承諾は不要です。
二
この調査項目(滅失物件の抵当権者への確認)は、滅失建物に関係があった利害関係人当事者として、取り壊された建物が本件建物であるか否かの心証形成に役立たせるためです。不動産登記の落とし穴(新日本法規)(21建物の滅失登記に抵当権者の承諾は必要 )を見よ。
K先生が誤解するのも無理はないと思います。まず、とくに被担保債権が残っている場合において、当局としてそのあたりを知っておきたいのだろうと推測がハタラクのでしょう。この記載例は、代理人調査士としてその点を確認する義務があると勘違いしてしまう書きぶりですから。
抵当権者の同意を得ていないので、この滅失登記の申請をすると怒られる…という調査士がいるかもしれません。このような様式にすることによって、債権者の権利を不当に奪うことに牽制をかける効果を込めているのであれば、それは正しい行政事務ではありません。
したがって、私は、次のように考えます。
1 銀行に訊く内容は、『貴方の抵当権が設定されている建物はこれ(指差し)であるか』であり、取り壊して建て替えを承認するか否か・被担保債権はあるかないかは無関係です。昔甲野太郎に貸し付けをしたがすでに返済ずみの場合において、銀行は取壊承諾をする立場ではないし、無関係であるから指差さされた建物であるか否かにかかわらず承諾をするに決まっています。
2 被担保債権が残っていて抵当権者があらかじめ建物取り壊しに反対している場合であっても、『貴方の抵当権が設定されている建物はこれ(指差し)であったか』と訊き「YES・指差された建物に抵当権を付けたのだ」という回答は意味があります。ただし訊きづらいと思います。
3 だいたいこのような抵当権者の証言は、建物が滅失されたという事実にそれほど貢献しないと思わいます。取壊業者の証明書や現地の写真などで公簿の建物が十分に特定できたのであれば不要です。且つ抵当権者に訊きづらい状況にある場合は「確認を省略しました」とするのがいい。
4 銀行ではない個人抵当権者で、すでに死亡しており、数十年前から弁済もしておらず、抵当権相続人が無関心で本件建物や債務者・設定者のことを知らない場合、この抵当権者相続人に「建物はこれ(指差し)であるか否か」を訪ねたところで意味はない。
5 問題は滅失建物の特定にあり抵当権が消滅しているか否かは無関係であるから、被担保債権を弁済したことを証する書面(たとえば供託書)またはその旨を調査報告書に書いても、意味はない。
不動産登記のQ&A210選(Q36 滅失登記―申請方法)には、次のようにあります。
「取り壊した建物に抵当権等の第三者のための登記がされている場合には、当該建物の滅失を証明する資料の一部として抵当権者等の承諾書(印鑑証明書付き)の添付を求める登記所もあります」
ついで『なお、抵当権者等の承諾書の添付がないからといって滅失登記が受理されないというものではありませんが、その場合には、登記官が実地調査をして建物が滅失していることを確認して登記を完了します』とされています。