非繋印型は令16条の印証になるか?

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・非繋印型(単独型)とはなにか、ここ

1 かかるサイン証明の非繋印型(日本領事館のいう単独型)は、令16条の印鑑証明書になり得ます。
 根拠は昭33.8.27民甲1738など民事局の先例が満載です。なお、後述東京局の取扱いには筆跡鑑定のようなことをもって同一性を判断するのではなく機械的な照合をすると書いてあるように読めます。そして、名古屋局は機械的な照合することを前提に同一性確認は不可能といいます。冷酷な言い方ですが的を射ています。名古屋は言い過ぎかもしれません。奇跡的に一致することがあり得るのですから。

2 昭49 ・10 ・12東京法務局長回答があります。これには「委任状に署名したものに奥書証明をしたものでなく単なる署名証明書であっても登記官は印鑑証明の照合をするのと同様にサインの照合をして申請の適否を判断すればよい」と作業方法を明示しているそうです。山北本の孫参照です。名古屋節ならば『するしかない』となりそうです。

3 名古屋においては、昭和63年(具体的には登記情報19-153)では、上記先例・東京取扱と同じ表現でした。しかし平成4年(20号)に「…署名及び拇印証明は、署名、拇印の同一性の確認が不可能ゆえこれを添付した相続登記申請書は受理出来ない」と表現を変えます。見解を変えたわけではありません。「要するに」ということです。梅北本にあります。この登記情報はきんざいのそれではありません。

4 印鑑ですらいつも同じ印影になるとは限りません。朱肉のつき方・押し方の違いにより一方が太くなり・一方が細くなるのは周知の事実です(これを「①印影におけるムラ」とします)。こういったムラが激しくなければ同一と照合します。しかし、そのあとに印鑑が少し欠け印鑑証明書と一致しないケースは同一にしません。同一の印章から印出されたものだろうといいたくなりますが、相違は相違。ダメなものはダメです。印章鑑定をしているのではないのです。顕(表)れた印影の照合をする作業をしているのです。
    ①印影におけるムラ
    ②印影と同等のムラ
    ③サイン特有のムラ
    ④ムラではない類(印章の欠け・字画の差異)

5 筆跡は、ペンによって太さが・スペースによって大きさが異なります(これを「②印影と同等のムラ」とします)。そして、その時の体調などによって形状の歪み・線の角度・ハライが異なります(これを「②サイン特有のムラ」とします)。
 東京局回答は、②印影と同等のムラを許容する書きぶりです。さらに②サイン特有のムラをも許容してくれそうな気がします。いっぽう、名古屋局は、ペンの差異による太さ・筆圧によるムラすらも否定するする書きぶりで硬直すぎるかもしれません。ただし、むしろ完全一致することは怪しいのですからこのような理由だけで評価することはできません。このあたりがこの問題の基本軸になります。はっきりさせない・させれないのです。

6 ④ムラではない類(印章の欠け・字画の差異)は、照合不一致となります。③サイン特有のムラ(線の角度など)を超えた・線が一本から二本になったり・一つの跳ねが二つになったりする字画の変化は、欠けた印影を提出したと同じで救われることはありません。サイン証明における署名は生涯変わらないものとみなされます。だから、有効期限というものがありません。同一人物の字画は異なることはないとするのが基本です。

7 吉田公一著の「筆跡・印章鑑定の実務」という本(ここ)。そこに「鑑定人は断定し過ぐる(シスギルと読みます)。 断定に重きをおきて理由を粗略にする」「予は書家の鑑定より老練なる裁判官の鑑定の方が正確だと思う」とあり興味深いです。私も、日本人の署名に限り複数のサンプルをもらえれば、同一人物だろうという見解に達することがあります。それは全人格的判断です。それは筆跡鑑定の領域に入っています。加えて背景事情なども要素にいれたりして判断します。そういった鑑定・判断は登記官の形式的審査権を超え危険です。

8 前述吉田公一本61頁に「筆跡の構成要素」が説明されています。『手書き文字は、運筆によって字画(じかく)が書かれ、字画が組み合わされて文字形成されるが、字画の運筆や組立てには運筆が関与する。筆跡の検査では運筆状態、字画形態、字画構成を扱うことはできない。』あります。

 筆跡鑑定をなんども試みた人なら理解できると思いますが、または野球選手のサインをみてもらえれば一目瞭然ですが、実際のところ③サイン特有のムラの程度(形状の歪み・線の角度・ハライ)と④ムラではない類(字画の差異)の境界は曖昧です。楷書のようにそうでないものもあります。

以上