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1はじめに
合併手続では「官報公告」と「個別催告」が必要です。
ダブル公告により個別催告を省略できますが、官報公告を省略することはできません。
債権者が存在しなくても(そういうことがありえるのかは措くとして)、会社が把握していない債権者がいる可能性を否定できないので、官報公告は必須です。
個別催告の相手先は「知れたる債権者」です。
知れたる債権者とは、まあ1円債権者も該当するのですから… 範囲は?と問われても… … … なんにしろ色分けしてみました。
2整理
・会社法は次のように規定します。
799条2項 :存続株式会社等は、次に掲げる事項を官報に公告するとともに、知れている債権者には各別に催告しなければならない。
789条2項 :消滅株式会社等は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者(同項の規定により異議を述べることができる者に限る)には、各別に催告しなければならない。
・文理解釈すると次となります。
1 一円でも負債勘定に計上されている先は知れている債権者と扱うことになる。だって、知れている債権者だから。
2 請求書が未発行でも仕入が確定していれば同様である。単に弁済期が未到来なだけである。
3 公租公課、水道料・電力などの公共料金も同様である。
一円債権者や水道局にも破産手続並に送付するようにしている先生もあるようです。ホントウだろうか? これらは個別催告の相手先から除外したい気になりますが、会社法に除外規定がありません。そういったことは解説すらもされていないように思えます。ない・されていないのは当たり前かもしれません。
3色分け
01 銀行などの借入金
02 買掛金(ただし09を除く)
03 未払い金(修繕費など非事業性)
04 管理契約・会員契約(別荘管理・スポーツジムなど、契約上の地位系)
05 継続的供給契約(家賃、顧問契約、将来発生系)
06 労働債権(給与債権)
07 友好的取引関係(事業主・兄弟会社など)
08 公租公課・公共料金・町内会費など
09 異議を述べられても対処が容易な少額債権者、合併前の支払いで消滅予定の債権
10 いちゃもんをつけられて訴訟継続中だが、会社がその債権の不存在を確信するのがその当時の状況から合理的な場合(後に敗訴が確定したとしてもその時点で知れたる債権者ではない)。
4コメント
・「04」に該当し催告先が千を超える場合は、ダブル公告が合理的です。
・「06」たる労働債権は、本来的に知れている債権者でないと考えます。
・「07以降」は、個別事例によっては滑稽です。
・「07以降」に限らず、1円債権者・水道局が知れたる債権者ではないという理由を求めることとは別に、このあたりをコントロールするための技術が必要です。
以上