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目的の適格性には、①明確性・具体性、②営利性、③適法性があります。
うち具体性は、会社法の制定に伴う類似商号規 制の廃止によって登記の審査の対象とならないことになりました(平18・3・31民商782号通達)。
明確性と具体性が難解です。この二つを独立した概念として考える人がありますが、私は冒頭のように一つのカテゴリーに押し込んでします。旧商法での取り扱いも同様でした。
旧商法時代において実務家は、類似商号規制の基準の公式を求めました。「明確性の定義が明確でない」「明確性と具体性は同義ではないか」と揶揄しました。
新会社法となって具体性が問われないことになりこの議論はなくなったように見えます。
私の旧商法時代の基準・公式を述べます。
まずはじめに、明確性と具体性は同義と割り切ります。いずれも論理学上の外延(公示内容(指示項)の範囲))とします。次に〈目的の適格性を語るという文脈における具体性〉とは、外延の縮小というどちらかというと作業のことを指すと考えます。なぜなら、旧商法時代おける〈具体性に欠けるとされた事例〉は、〈絞り込み〉の場面で登場するからです。そして、このように再構成するとこのあたりを上手く説明できます。
絞り込みの話をしましょう。
明確性とは、「語句の意義が明瞭であり一般人において理解可能なこと」とされています(商事法務)。言い換えれば、一義的であり又はある程度の幅が許容されるがつまり「共通認識が得られる」ことです。そして「商売」という言葉は共通認識が得られます。「事業」も同様です。だから登記可能です。営利性・適法性が気になるのであれば「営利性があり適法な一切の事業」となります。
しかし、「商売」だけではマジメさが問われます。相手方から「内装工事業の建設業の許可が欲しいなら、内装工事業と書いてもらわないとだせれない」と回答があることが多いと聴きます(当否は措くとして)。
そこで登場するのが『具体性』というわけです。それは前述の「外延の(さらなる)縮小という作業」です。
目的の適格性という本は、総務省の産業分類別に説明します。内装工事業は「大分類D 建設業>中分類07 職別工事業(設備工事業を除く)>078 床・内装工事業>0782 内装工事業」とのようにより深く絞り込みがされます。そこで、絞り込みをかけるなら大分類の『建設業』でもよいのです。十分に明確性がありますし具体性もあるのです。しかし、もっと限定的に絞り込みをかけたいという事情から『内装工事業』とするのです。
「明確性の定義が明確でない」「明確性と具体性のチガイがわからない」という混乱の原因はそこにあったと思います。類似商号規制を前に個別事例に応じてチューニングが必要になったのです。
これが「目的の適格性のうちの具体性の正体」です。