S37.5.4民甲1262

昭和37年5月4日民甲第1262号民事局長回答
S37.5.4民甲1262
sites/21055026

登記上の存続期間の満了した地上権の設定の登記がされている土地についても、その登記を抹消しなければ、さらに地上権の設定の登記をすることはできない。

昭和37年3月20日付37森公第877号森林開発公団理事長照会・昭和37年5月4日付民事甲第1262号民事局長回答

 

存続期間の満了した地上権設定の登記がある場合に重複して地上権設定の登記をすることの可否について

【2528】 抵当権の設定登記及び地上権の設定登記の嘱託書の書式につきましては、かねてより格別の御指導と御高配を賜わり、厚く御礼申し上げます。

 さて、当公団の行なう分収造林事業におきましては、造林の目的なる土地の上に、当公団において地上権を取得することが要件となつておりますところ、往々にして、当該土地の上に、その存続期間の既に満了している既登記の地上権が抹消されずに残つていることがあります。

 かかる場合には、先ず土地所有者及び地上権者をして当該地上権の登記の抹消手続をとらせ、然る後当公団の取得した地上権の登記嘱託を行なうことが本筋とは思いますが、地上権者の事情等により、抹消登記の申請手続は必ずしも簡単ではないので、既にその存続期間が満了している地上権の登記については、その抹消登記の手続を終ることなく、当公団の地上権設定の登記嘱託を行なうことができないものか、御教示頂きたく、御照会申し上げます。

回答:昭和37年3月20日付37森公第877号で照会のあつた標記の件については、貴見による取扱いをすることはできないものと考える。

—-

登研176号57頁の解説
(解説)本件照会は、存続期間の満了した地上権設定の登記がある場合に、当該地上権設定の登記を抹消せずに重複して地上権設定の登記をすることができるかどうかの問題である。これに対し、民事局長回答は、かかる登記をすることはできないものとしたのである。いうまでもなく、不動産登記法による登記は、不動産に関する権利の得喪変更等を公示する方法であって、これによってその権利の得喪変更等を第三者に対抗し得るのであり、既に存する登記と同一もしくは相容れない登記を許すことができないのである。
したがって、地上権設定の登記が既に存する場合においては、同一の土地の上に重複して地上権設定の登記をすることはできないのであるが、既存の地上権の存続期間が満了していることが登記簿上明らかで、かつ、既存の地上権者が登記義務者として抹消登記手続に協力しない場合でも、同様に解すべきかどうかが問題となるのである。すなわち、不動産の物権の消滅も、その消滅を第三者に対抗し得るためには、原則として登記(抹消登記)をすることが必要であるとはいうまでもないが、地上権設定の登記事項中に存続期間の定めが登記されている場合には、当該地上権設定の登記の抹消を必要としないものと解されている。ただし、この場合には、地上権の消滅があらかじめ登記されているものと見られるからである。したがって、本件の場合には、地上権設定の登記の抹消をしなくても、第三者に対する関係においては、地上権設定の登記が存しないこととなり、重複して地上権設定の登記をすることにはならないから、当該登記の嘱託をなし得るとも考えられないではない。
しかしながら、既存の地上権設定の登記を抹消せずに重複して地上権設定の登記を許すものとした場合には、一不動産上に二個の地上権設定の登記が併存することとなり、後日仮りに既存の地上権の存続期間の延長による変更(又は更正)の登記等がなされたような場合には、登記簿上における権利関係が非常にまぎらわしくなるものといわざるを得ないからである。元来、権利関係の公示を目的とする登記簿が、このような状態に置かれるということは、極力避けるべきが合理的な取扱いであろう。したがって、既存の地上権設定の登記が抹消されない限り、同一の土地の上に重複して地上権設定の登記をなし得ないものとしたのである(不動産登記法第四十九条第二号参照)。なお、本件の場合において、登記官吏が誤って受理登記した場合、不動産登記法第百四十九条の規定が適用されるかどうか疑問であるが、消極に解すべきであろうか。